設立の経緯

我が国は、団塊の世代(約800万人)が75歳以上となる2025年以降、国民の医療や介護の需要が、さらに増加することが見込まれています。このため、地域の包括的な支援・サービス提供体制(地域包括ケアシステム)の構築が喫緊の課題となっています。

地域包括ケアシステム構築の推進に当たって重要なことは、医療、介護各機関において一人の住民を切れ目なく見守ることですが、個人個人の健康情報(PHR:Personal Health Record)が色々な所に様々な形で分散しているために情報の統合ができておらず、情報を入手するために二重、三重の手間がかかることが問題となってきました。

この分散した個人医療健康情報(PHR)を系統立ててクラウドに集約し、「どこでもマイ病院・マイドクター」、「シームレスな地域医療連携」の実現の基盤とするため、医療・健康情報を電子的情報(EHR:Electronic Health Record)にし、データベース化して管理活用することを可能にする仕組みである医療情報連携基盤の構築が必要になってきました。(総務省「新たな情報通信技術戦略平成22年版」)

これまでに、全国でおよそ 260程度(2016年度)の医療情報連携ネットワークが立ち上がりましたが、多くが運営費用や利用率の低さなどの問題を抱えています。そこで、この度総務省ではそれらの既存のネットワークを生かしながら、誰でも使え、利用率が高く、なおかつ利用料金の低いネットワークの構築を進めることになりました。

現在のネットワーク

TGPネットワーク(平成29年度総務省採択事業)では?

新しいネットワーク
  1. TGP(Trans Gifu Partnership for Sharing medical database:環岐阜地区医療介護情報共有協議会)ネットワークとは、住民(患者様)のみなさんの同意に基づき、岐阜市、羽島市、各務原市、山県市、瑞穂市、本巣市、羽島郡岐南町、笠松町、本巣郡北方町の病院、診療所、歯科診療所、薬局、訪問看護ステーション、介護サービス事業所などをネットワークで結び、診療情報(病名、処方、検体検査結果)・介護情報を共有し、いつでも、どこからでもデータベースにアクセス可能な、クラウド型EHRシステムです。
    様々なベンダー(医療情報システムメーカー)の系統に対応可能ですので、各方面からの低コストでスムースなアクセスが容易になります。
  2. 診療所や、薬局のレセコン、パソコンに接続することにより、電子カルテを持たない施設との連携が可能になります。
    また、検体検査会社に協力していただくことにより、検査結果を直接クラウドに取り込みます。これらにより、今まで不可能であった、診療所などに保管されている診療情報をネットワークで共有することが可能になり、シームレスな病診連携が可能になります。
  3. 地域の協力支援企業等のご協力により、地域社会全体でTGPネットワークをサポートする体制が構築されています。

設立の目的

TGPネットワーククラウド型EHRを構築する目的とは?

TGPネットワークはベンダーに関係なく各方面からのアクセスが容易になり、双方向の連携を可能にします

クラウド型EHRは、情報をネットワークを通じて一旦サーバーに蓄積し、関係者間で共有することを可能にします。しかし岐阜県における今までのネットワークでは、異なるベンダー間において統一した形式で情報を表示させることができていませんでした。
そこでTGPネットワークでは様々なベンダー系統でも連携を進めるために標準仕様を採用し(マルチベンダー方式)、異なったシステム内に存在する情報をピックアップした後、クラウド内で統一した方式に書き直し表示する仕組みとなっています。
したがって、病院、診療所、歯科診療所、薬局、訪問看護ステーション、介護サービス事業所などが、どのようなベンダーのどのようなシステムを導入していても、TGPネットワークで情報を共有することが可能になり、双方向の医療介護連携が大きく飛躍します。

住民のみなさんの医療健康情報がご自身のために使えるようになります

本来、診療情報(病名、処方、検体検査結果)、介護情報などの医療健康情報は個人のものです。将来的に、ご自身でもこれらの情報を見ることができるようにシステムを構築して参ります。

健康増進活動の促進

総務省のIT戦略本部が平成23年に中国地方で行った実証事業の検証結果では、EHRを作ることにより住民本人が自らの診療情報・調剤情報を確認し、健康状況を把握しようとする行動が増加し、健康増進の一助になることが報告されています。

災害時に時間、場所を選ばず救命救急支援

東日本大震災においては、津波によりかかりつけ医やかかりつけ歯科医に保管されていた住民のみなさんの過去の診療情報が失われ、搬送先における適切な医療の提供が困難になりました。災害対策の観点からも、クラウド技術を活用し、医療機関等が保有する住民のみなさんの診療情報を電子的に記録・蓄積・閲覧可能とし、災害時に遠隔地においても、必要に応じて、住民のみなさんの診療情報等を参照・共有できるEHR構築の効果が注目されています。

今後の目標

ネットワークエリアイメージ

環岐阜地区(Trans Gifu Partnership)TGPになった経緯

総務省の採択要件に、2次医療圏で人口当たり5%以上の住民の参加同意を得るという目標があります。仮に岐阜市の41万人を含め各務原市から山県市まで総人口80万人になると、同意者獲得目標が4万人になり、年度内の達成が困難になることが予測されました。そこで申請時は岐阜市を除く人口39万人、同意者獲得目標を1万9千人規模からスタートすることになりました。現在は、岐阜市内の施設にも参加をしていただいています。

TGPエリアイメージ

参加目標施設数

全施設数に対し、初年度60%、3年後80%、5年後95%の施設の参加の目標としています。

全施設数 初年度(2017年) 3年後(2020年) 5年後(2022年)
病院 15 9(60%) 12(80%) 13(88%)
医科診療所 232 139(60%) 186(80%) 204(88%)
歯科診療所 169 101(60%) 135(80%) 161(95%)
薬局 171 103(60%) 137(80%) 162(95%)
訪問看護/居宅介護 178 107(60%) 142(80%) 169(95%)
老健/老人福祉施設※ 53 32(60%) 42(80%) 50(95%)
患者登録数 19,652(5%) 39,304(10%) 78,607(20%)
老人福祉施設(特別養護老人ホーム、養護老人ホーム、ケアハウス等)